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​ナラ枯れ木材

今回ベンチの座面になっている木材は、皆さんの目にどのように映ったでしょうか?一見すると立派な木材、実は「ナラ枯れ」と呼ばれる病気のために伐採せざるを得なくなったコナラの大径木です。近年、「ナラ枯れ」は拡大の一途を辿り、里山保全の大きなハードルとなっています。研究室では、これらの木材の利用方法を研究室プロジェクトとして議論しています。展示を機会にこの問題と私たちの活動を簡単に紹介したいと思います。

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ナラ枯れしたコナラ

ナラ枯れとは?
「ナラ枯れ」は、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)がコナラなどのブナ科の樹木に病原菌を伝播することによって発生する「ブナ科樹木萎凋病」の通称です。近年、この「ナラ枯れ」が全国各地で起こり、拡大の一途を辿っています。「ナラ枯れ」に感染した樹木は、紅葉がまだ早い時期でも葉が散っていたり、まばらに枯れていることで確認することができます。対策を講じなければ、被害は林全体に及ぶため、貴重な森林資源に被害に遭う可能性があります。

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​明治大学黒川農場の里山林

ナラ枯れの原因

「ナラ枯れ」の拡大には、人間の生活様式の変化に伴う広葉樹木の大径化が大きな背景にあります。以前は、コナラなどの里山の広葉樹は薪炭材等の燃料として利用されることによって、定期的な更新が行われ、里山が保全されてきました。しかしながら、近年は人の暮らし方が変化したことによって、薪の利用は減り、里山の樹木は利用機会が少なくなりました。管理者なしで里山の環境を維持することは、難しく、里山林の樹木は大径化しました。大径化した広葉樹林は、カシナガの繁殖しやすい環境であり、結果として現在の「ナラ枯れ」が大きな問題になっています。

ナラ枯れの課題 

「ナラ枯れ」によって枯れた樹木は、1.粉砕し、燃料チップにする。2.燻蒸処理などをし、伐採したまま放置する。等の処理がされます。しかしながら、伐採した樹木を放置することは、次世代のカシナガの温床になる可能性があり、今後伐採量が増加することも考えると別の駆除方法を考える必要があると思います。せっかく大きく成長した広葉樹大径木をゴミとして処分することなく、利用することはできないでしょうか?

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黒川農場で伐採されたナラ枯れ材

研究室で考えていること
そこで私たちは、明治大学黒川農場で伐採された「ナラ枯れ」木を、未利用資源として活用するために、プロジェクトnat(n:ナラ材をa:余すことなくt:使う)を立ち上げ、利用方法について議論してきました。そして現在、これまでの議論から次の3つのことをナラ枯れ材のユニークなテーマとして扱っています。

 

1.防除の観点から薄い板材として引く必要があること

2.カシナガによる虫穴の痕跡を利用すること

3.大径木であった履歴を生かすこと

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​金継ぎ加工による虫穴の利用

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クリア塗装

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アクリル脚とクロメートジョイント

今回の展示利用もこの議論を参照しながら、展示空間なりの利用方法を考えました。キーワードは、「魅せる」ことです。虫穴への金継ぎ加工・カット面のクリア塗装・浮遊感を演出するアクリル脚の設計・家具の形態と連動するクロメートのジョイント。私たちの考えるかっこよさを組み合わせながら、ナラ枯れ木材を豪華な材料として演出することを今回の展示を通して考えてみました。​

終わりに

今回の私たちの休憩スペースをきっかけに「ナラ枯れ」について興味を持っていただけたでしょうか?「ナラ枯れ」の問題は、遠いようでとても身近な問題です。1分野だけが対策を講じるだけは、不十分であり、多様な主体がそれぞれの取り組みを考える必要あります。私たちの場合であれば作ることを通して、この問題を伝えたいと考えています。

構法計画研究室

kadowaki lab.​特設サイト

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